第6回 オンかオフか、それが問題だ~カジノ・ロワイヤルはどのカジノに~

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ついに再映画化が決まった007映画「カジノ・ロワイヤル」。「再」と言っても、オリジナル・バージョンは、ずっこけてばかりのコメディ映画だった。怪優ピーター・セラーズを始め、なんと7人もの英国諜報部員ジェームス・ボンドが出てくる。イアン・フレミングの原作に描写されているような、フランスのカジノで繰り広げられる午前3時の真剣勝負、なんて言うシーンはないのだ。007の映画化としては初のものであり、それなりにカルト的ステータスを保つオリジナルだが、007ファンはずっとこの「カジノ・ロワイヤル」がマジメに作り直される日を待ちに待っていた。

クランクインは来年1月と発表されているが、ボンド役は、再びイギリス人俳優ピアス・ブロスナンになるのか、100人以上取りざたされた候補の中からしぼられた若い「無名俳優4人」の中から決まるのかも不明。しかし、舞台裏ではすでに「ボンド経済効果」を狙った壮絶なコンペが始まっている。毎回ボンドが使う「ガジェット」―特殊な小型武器やクルマはもちろんの事、衣装からケータリングに至るまで、「ボンド映画に使われた」と言いたいがために企業と言う企業が「ウチを使って」と群がるのである。


<「パーク・タワー・カジノ」の外見>



<「パーク・タワー・カジノ」の内部>

そして、今度の映画の一番の目玉となる舞台は…カジノなのだ!

カジノ・シーンの大半はアメリカ東海岸沖の島にあるスタジオで撮影される事になっているが、実写も予定にあるそうで、使うカジノの選定がはじまっているとか。ラスベガスやモナコなどの有名どころはもちろん、イギリスのカジノも負けじと手を挙げている。全ては秘密裏に進行しているので、どこが立候補しているかは誰も公言していないが、噂ではロンドン、ケンジントンのシェラトン・ホテルにある「パーク・タワー・カジノ」もその一つだそう。13面のテーブルにスロットマシーン2列という中規模なカジノながら、どことなく60年代のフレーバーを漂わせるインテリアはなかなか個性的だ。もう一つは多分リッツホテル(第2話を参照)である。建物の威厳は申し分ないし、本物の国際諜報機関員も遊びにくるほどである。


本物と言えば、007の原作者イアン・フレミング本人も英国の諜報活動に関わっていたのをご存知だろうか。国会議員の父を持ち、優等生の兄とは対照的にどこか陰のあるエリートに育った彼は、ロイター通信特派員としてロシアへ送られたが、大戦の勃発とともに政府入りしスパイ活動に参加。その時の経験が後のボンド小説に結実したのは言うまでもない。しかし、フレミングが国際事情だけでなく賭博、グルメ、車と女性に深く通じていたのは良く知られている。そう、彼はジェームス・ボンドそのものなのだ。

英国的カジノとは、ダーク、ダーティーと言ったネガティブで低俗なイメージとは遥かにかけ離れた、高貴な大人の遊びだ。20世紀にこれを極めたのがフレミングであり、ボンドだった。来年秋に公開されると言うボンド映画第21作「カジノ・ロワイヤル」でそれがどう描写されるのか、楽しみにしたい。

「パーク・タワー・カジノ」Park Tower Casino
住所:101 Knightsbridge, London SW1X 7RQ

ブラックジャック:3テーブル
カジノ・スタッド・ポーカー:1テーブル
ポーカー:4テーブルとスクリーンでオンライン対戦
パント・バンコ:1テーブル
ルーレット:4テーブル
スロットマシーン


<007映画音楽のCD>