第2回 オンかオフか、それが問題だ~カジノと紳士倶楽部の甘い関係~

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ロンドンで老舗と呼ばれるカジノには、高級ホテルの中で運営されているところと、独立した場所を持つものがある。今回ご紹介するのは、とびきり有名なホテルの中にあるこれまたプレスティージ溢れるカジノ、「ザ・リッツ・クラブ」だ。ホテルの方は、パリのリッツ・ホテル(故ダイアナ妃が最後に訪れたところとして有名)のオーナー、セザール・リッツによって1906年に建てられた。レンガ作りのロンドンに初めてお目見えした鉄筋構造のビル、としても知られるこのホテルは、開業と同時にロンドンの華やかな社交界の舞台となった。

しかし、カジノの方の正式なオープンはずっと後の1978年。創業30年では老舗とは言いがたいのでは?実は、ギャンブル法の規制のため、全くのオフレコながらカジノの機能はホテルの奥深くにあったのだ。それも、「ジェントルメンズ・クラブ(紳士倶楽部)」という呼称で、知る人ぞ知る存在。今もとても厳しい会員審査だが、その頃は審査どころか、「王族、貴族と上流階級」しかその秘密のドアの中には入れてもらえなかった。しかも名の通り男性専用だった。

この「紳士倶楽部」はロンドン中心にいくつかあり、17世紀には珍しかったチョコレートとコーヒーをいただく喫茶の場だったが、すぐに賭けカードが始まったという。その紳士倶楽部の流れを引くここリッツ・クラブはまさに血統書付きカジノといえる。


<リッツホテルの外観、夜景>



<ホテルの入り口広間>

会員になるには、年会費1,000ポンド(約20万円)とパスポートなどの身分証明を添えて申し込む。認められれば、24時間後には定評のあるクラブの一員として歓迎されることになる。

カジノの内装はホテルと同じく、オリジナルの「ルイ14世スタイル」を受け継いでいる。占める場所は、もと大宴会のためのボールルームだったとか。何とも贅沢な空間だ。中には、イタリアで始まり、イギリスでゲームの仕方が確立されたと言うバカラ、その他にアメリカンルーレット、ブラックジャック、スタッド・ポーカーのテーブルが5台づつある。バカラから発展したパント・バンコというゲームも1面あるが、ここでは、一回の掛け金が1000万円に昇る事が珍しくない。


リッツ・クラブでは、お金持ちと言うだけでは歓迎されない。フォーマルウェアを普段着のように着こなし、紳士淑女として上品かつ優雅に振る舞う事のできる人だけがゲームを楽しむ事ができる。つい最近、ここでハイテクを駆使する国際的なイカサマ賭博師3人組に、2億6千万円を持っていかれたと言うニュースが流れたが、結局証拠不十分で不起訴に終わったという。こんな、スケールの大きな話が紳士倶楽部には常につきもののようだ。今はやりのオンライン・カジノも始めてはいるが、本物の方は全くの別世界。プレイする人々に最高のステータスを与えるステージとして、揺るぎない地位を誇る。

次回は、大英帝国が華やかなりし頃にロンドンでカジノの原型を起こした究極の遊び人、ドルセー伯爵と彼の遺志を蘇えらせたという新しいカジノをご紹介しよう。

The Ritz Club
150 Piccadilly, London W1J 9BS
電話 020 7499 1818


<リッツクラブへの入り口>