第5回 トロントのカジノ事情~国民のシアワセと健康のために~

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カナダ国民の多くは、「みんながシアワセに健康に暮らせるように取り計らうのは、当然政府の仕事である」と思っていて、そういう考え方はカジノ施設やその他のギャンブルビジネスにも影響している。例えば、カジノへのアクセスは、若い人もお年寄りも、障害者も、できるだけ平等に、というので施設内は車椅子で自由に動けるように設計してある。車から降りてビルまで歩くのが大変な人のためには、短い距離でも駐車場内シャトルバスや車椅子専用車が走っている。


<ウッドバインカジノのゲート>

パート1でも書いたが、ギャンブルで身をほろぼしそうな人や、その家族・友人はいつでもホットラインに電話したり面接の予約を入れたりして相談にのってもらえる。生活に困る事態になったからといって借金や大負けしたお金を政府が返してくれるわけではないが、家族が相談に行くといろいろな対策方法を教えてくれるプロのカウンセラーがいる。もちろん無料だ。

トロントには約170カ国から移住してきた人々が暮らしているが、中にはまだ英語がよく読めない人も、話せない人もいる。だから、政府は「ギャンブルの適度な楽しみ方」や、「習慣にならないようにする対策方法」を書いたパンフレットを20カ国語で用意している(残念ながら日本語はない)。

というように、政府の仕事は素晴らしい。しかし、国民の健康に気を使いすぎてカジノの雰囲気を壊すものが一つある。それは、ゲームフロアもバーもレストランも禁煙となっていることだ。スモーカーはガラスの壁で囲まれた喫煙ルームに行かなければならない。タバコの害が証明されている今の時代、健康先進国ともいえるが、スロットマシーンの音とジャズのBGMの中でお酒を飲みながらタバコや葉巻をくゆらせる、というシーンがカジノにないのは、ちょっとさみしい気もする。