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第3回 シニアに訊く。
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オランダ最北の州都、フローニンゲンに住むピーター(仮)は67歳。退職してしばらく手持ち無沙汰にしていたところ、友達に誘われたのがきっかけで、『ホランドカシノ』に通うようになった。それまで全く縁のなかったカシノだが、思いのほか「フレンドリーでくつろげる雰囲気」だったのが気に入って、すぐに常連客の仲間入りをした。
かれこれ半年、週一回のペースで通っているが、彼のお気に入りは水曜日。同世代のシニアたちのほとんどが、この日にやって来るからだ。ピーターにとってカシノは社交の場であり、フロアをクルーズして、顔見知りとおしゃべりを楽しむのが一番の目的だ。「勝てばもちろんうれしいけど、別に勝ち負けにはこだわらないよ」そんな彼の最高成績は、競馬ゲームで当てた500ユーロのジャックポットだという。
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<水曜日は全店共通レディースデー。フローニンゲンでは“裏シニアデー”。>
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<市役所正面玄関?いえいえ、カシノの入り口です。電動スクーターにも注目。>
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先日、彼と一緒にフローニンゲン店へ行ってみた。なんと、入り口で私たちを出迎えたのは、回転ドアの両サイドを固める自転車置き場…。“どこまでも平坦なオランダでは、自転車が一番便利な交通手段で、”なんて事情は十分承知しているが、ゴージャスなイメージに包まれたカシノと、地味な自転車の取り合わせには笑ってしまう。しかし、カシノの中へ一歩踏み入れば、そこは別世界。赤絨毯の階段とローマンペインティングの天井が、VIPな世界へと誘ってくれる。
この日は水曜日で、全店共通の「レディースデー」だが、そのネーミングに反して、男性でも入場無料になっていた。地元のシニアたちが、水曜日に集まってくるワケはこの辺にありそうだ。フロアを見まわすと確かにシニア客の姿が目立つ。彼らのほとんどはスロットマシーンに興じている。いや、正確にはフロアにいる客のほとんどがスロットマシーンの前に座っている。さすが、一番人気の2セント台は満席だ。プレーしながらの飲食・喫煙はOKだし、用足しなどでちょっと席を空けるだけなら、台はキープできるので、ここは気長に待つしかない。
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<そんなフローニンゲン店も、一歩踏み込めばVIPな雰囲気。>
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<この楽しそうな顔に、コメントはいりません。>
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ようやく空いた2セント台に腰かけた途端、隣に陣取ったおばあちゃんのマシーンにフィーバーがかかった。ついさっきコインを入れたばかりじゃない!思わず注目していると、おばあちゃんはプレーの仕方やゲームの仕組みを教えてくれたが、その間に彼女の台は100ユーロをキャッシュアウトしていた。そこから1ユーロコインをつまみあげ、再びマシーンに投入。面倒見のいい彼女は、私のために説明を続けたが、それも気づけば80ユーロに膨れ上がっていた。
このおばあちゃん、ひょっとしてかなりデキるのでは?ぶしつけながら、過去の戦績を尋ねてみた。「そうね、一番大きかったのは、今年のイースターに当てた12,000ユーロ(約164万円)のジャックポットね」だって。残念ながら彼女のご指導も空しく、私の台はコインを飲みこむ一方だったが、彼女と知り合ったことで、なんだか得したような気分を味わった。ちなみにこの間、ピーターのことはすっかり忘れていた。ごめんよ、ピーター。
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